カエサル暗殺

ローマ史は、出だしの建国期が退屈で、読んだことがないのだが、
カエサルが暗殺されたことは、世界史の常識なので、もちろん知っている。
共和制が崩壊し、帝政へと移行する中の元老院側の抵抗、ということで
特に強調された覚えもない。
あまりに有名な事件だからだったかも知れない。


今回、塩野七生の「カエサル」を読んでみて、その暗殺事件のあまりの
お粗末さに、ちょっとびっくり。
暗殺とはとても言えないような、14人が一人を虐殺した単なる殺人事件で、
しかも、事件は歴史の流れを変えもしなかった。
(実際は変わったかも知れないが。。)
元老院の威光は取り戻せず、どころか、下手人が元老院議員ということで、
民意は得られず、カエサルの後継者オクタヴィアヌスは、着実に帝政の
基礎を固めていく。


「ブルータス、おまえもか」というかの有名な台詞と言うか、
ミステリ風に言うと、ダイイングメッセージは、
暗殺の首謀者マルクス・ブルータスではなく、
カエサルの事実上の右腕デキウス・ブルータスに対し発せられた
という説が紹介されていた。
高潔な人として有名で、カエサルの愛人の息子であり、
それどころか、カエサルの息子とまで言われた
マルクス・ブルータスに対して、よりも、
血縁者であるオクタヴィアヌスが遺言を受けなかった場合の
相続人としているデキウスに対する言葉とした方が、
確かに筋は通るし、ここで自分の命運が尽きたと呟く
最期の言葉として相応しいような気がする。