三十棺桶島

初めて読んだのは、児童向け世界文学全集一篇だった。
身も凍るような思いをしながらも一気に読んだ記憶がある。
今にして思えば、何故、児童向きにこれを選んだのか、疑問が起こる。
奇巌島だって、水晶の栓だって、怪盗紳士登場だって、遜色ないだろうに。
バーネット探偵社や、ルパンの告白だって、名作だ。
(もっとも、奇巌島、怪盗紳士登場は別の巻に掲載されていた)
それなのに。
何故、三十人もの大量殺戮が行われる棺桶島を選ぶのか。
アルセーヌ・ルパンシリーズ中でも傑作だというのは認める。
巨石文明から科学の最新情報まで駆使し、大人にも読みごたえ十分。
ただ、ルパンの登場が終盤になってからで、とってつけたように感じられ、むしろ子どもには理解しにくいのではと思うのだが。
実際、私には恐怖の印象が強く、ルパンシリーズを全訳で揃えたときに、この一篇は省いた。
つまりは、今まで完訳を読んだことがなかった。